世界トップ学生の就職活動2024 - 日本企業が世界の企業に採用競争で勝つためのガイドラインの前編では、世界トップ学生を取り巻くマクロ環境および、なぜ世界トップ学生から日本企業への関心が高まっているのかについて記述いたしました(前編:https://corporate.jelper.co/post/recruitment-guideline-topstudents-first)。本編では、そういった世界トップ学生を採用していくためのアクションについて記載していきます。
まずは前編の振り返りとして、世界トップ学生を取り巻くマクロ環境の変化と、日本企業に対する関心の高まりの背景を以下に箇条書きで記載いたします。
世界トップ学生を取り巻くマクロ環境の変化
・米国雇用市況の悪化
・米国における就労ビザ要件の厳格化
・安全保障環境を巡る変化
日本企業に対する関心の高まりの背景
・日本に対する憧憬の高まり
・直近の日本企業の再興隆
・日本の生活の質の高さと安全性
こういった状況の中で、日本企業が海外のトップ企業に採用競争で勝ち、世界トップ学生を採用するためにはどういったアクションを取ればよいのでしょうか。以下に弊社からの提言を記載いたします。
1. 日本でのインターンシップの充実化
アメリカや英国では、夏季休暇中のサマーインターンシップ(5-10週間が一般的)を通じて経験を積ませた上でフルタイム入社の適正を判断し、オファーを出すのが一般的です。企業側のメリットとして、スキルやカルチャーでのミスマッチを防げるといったことが挙げられますが、これは学生側にとっても同じで、特にカルチャーフィットの有無を見極められることが大きなメリットとなっております。また、今まで日本に来たことがない学生にとって、いきなり日本に来て、フルタイム契約を結び、働くというのは大きなリスクテイクであり、ためらいを覚えるケースも多いです。そこで、サマーインターンシップを通じて日本での生活に慣れさせつつ、スキル及びカルチャーフィットの点を精査していく形がベストです。
2. 日本語要件の緩和
世界トップ学生が日本で働くにあたって、やはり日本企業の日本語要件の高さというのが大きなハードルとなっております。弊社担当者の肌感覚となってしまいますが、競技プログラミングや数学・物理オリンピックなどのアカデミックコンペティション系でのメダリストで、かつ世界トップ大学で高い成績を取り、実務経験も豊富な世界トップ学生が、日本での就職に興味を抱くものの、日本語がハードルとなり、結局欧州のトップファームに就職するというケースが、直近10年間で毎年複数件発生しております。事実、こうした学生が弊社Jelper Clubに登録し、日本での就職の機会を伺っています。
確かに日本でビジネスをする以上、日本語が必須というのは理解に資するものではあります。しかしながら、こうした世界のトップ集団の中でのトップ層を新卒で採用できる機会を、語学要件を理由として逸することによる機会損失は非常に大きいです。
営業職や、コンサルタントなど、日本人クライアントと日々接し、極めて高い日本語感覚を要する職種ならまだしも、技術職など技術アウトプットを重視するような職種であれば、日本語要件を緩和し、積極的に専門性が高い世界トップ学生の受け入れを進めていくべきであると考えます。近年は語学力の低さを補うようなデバイスも多数開発されており、そういったデバイスを駆使しながらコミュニケーションを取るのも一つの手です。また、それでも高い日本語力を必要とするのであれば、インハウスで日本語レッスンを提供するのも有効です。事実、世界トップ学生の多くがマルチリンガルであり、日本語の上達スピードも他の学生に比べ格段に速いです。例えば、Jelper Clubの会員であるハーバードの某学部生は、日本語を0から始め、1年半でN2レベルを取得し、2年半でN1レベルに達しました。そういった学生に対して日本語レッスンを提供すれば、ビジネスを行う上で問題ないレベルまで上達する可能性は高いです。
3. バディ制度の導入
1や2でも言及いたしましたが、やはり今まで日本で働いたことのない人が日本に移り住んで働くというのは、非常に心理的ハードルが高いです(そのハードルを乗り越えようとしてまで日本で働きたいと思っている世界トップ学生が多く存在するのは、日本にとって非常に幸運な事象ですが)。
そんな日本での就労を志す世界トップ学生の心理的ハードルを下げるためにバディ制度、いわゆるメンター制度を導入することを推奨いたします。バディおよびメンターとして外国人社員がいればベストですが、社内にいなければ海外経験が豊富な社員を配置するも一つの手です。バディ制度は、社員の異国における労働から生じる不安やストレスを緩和するのみならず、就労ビザ関連の手続きや日本での生活、日本語習得方法などに関するナレッジトランスファーにもつながるケースや、社員同士の絆の醸成を通じ、リテンション率の向上をもたらすため、世界トップ学生の活用を推進する施策としては非常に効果的です。
4. ジョブローテーション制度の導入
専門人材が育たない、であるとか、評価基準が曖昧になってしまい、結果として年功給の根源となっている、と揶揄されてきた日本の伝統的なメンバーシップ型雇用、そしてその代表的な特徴であるジョブローテーション制度が、実は世界トップ学生の採用にとって非常に効果的である、と説明すると、多くの採用担当者が首を傾げる傾向にあります。しかしこれは事実なのです。
近年、コンサルティング業界の人気がすさまじく、この人気は日本のみならず世界中で起きております。事実、弊社が開催した過去の採用イベント(Japan Career Summit)では、志望業界としてコンサルティング業界を挙げている参加者の割合が、過去3回で60%~70%のレンジの数値を記録しております。これら学生にその背景を聞くと、必ず答えとして上がってくるのが、「将来何をやりたいか分からないから、様々な業界・業種に携われるコンサルティング業界に就職したい」という声です。この、将来何をしたいか分からない、いわゆるキャリア・モラトリアムに陥っている学生は、近年のすさまじい技術革新と業界変遷と共に、比例して急増しております。特にコロナ禍以降ではその傾向が顕著となっております。そういった学生にとって、メーカーやIT企業での就職は、非常にリスクの高い選択肢として映っている傾向にあります。
そこで、このジョブローテーション制度を導入し、社内において様々なキャリアオプションを作ることで、そうしたキャリア・モラトリアムに陥る学生の多くを惹きつけることが可能となります。また、もし既に新卒プログラムの特徴としてジョブローテーション制度が存在する場合は、その点を学生側に打ち出すことを強く推奨します。このメンバーシップ型雇用におけるジョブローテーション制度こそ、身の安全を保障しながら、学生自身の適正職種を見つけることができる優れたプログラムなのです。海外から日本に移り住み働くという、極めて不安および緊張状態にある学生に対して、このプログラムは訴求力が非常に高いです。
近年、様々なメディアがこのメンバーシップ型雇用に対し批判的な報道を繰り広げておりますが、この雇用形式こそ世界の最先端の雇用形式であり、世界中の学生を惹きつけるものであることを、日本企業は知るべきであるし、それをむしろ打ち出すべきであると考えております。
5. 日本でのポジションを用意
前編で言及した通り、"日本での生活"に対し憧憬を持つ世界トップ学生は多いです。勿論、"面白い事業"に惹かれる世界トップ学生も多いため、ニッチなビジネスや興隆している領域の事業を展開している場合は別ですが、基本的にはやはり"日本で労働する"ことに魅力を感じているケースが多いです。"日本"という給与格差を穴埋めできるアセットを有効活用することで、採用競争を優位に進めることが可能となります。
以上が弊社からの提言となります。
なお、上記の点はあくまでアクションのオプションであり、全てを行う必要はないということに留意していただければと存じます。実際のアクションに落とし込む際は、現状や募集職種に合わせて、必要となるアクションを各々ピックアップしていただければ幸いです。なお、その落とし込みにあたって分からないことや不安なことがある場合は、弊社Jelper Clubまでお気軽にお問い合わせいただければと存じます(URL:https://forms.gle/yTT5Ar8kPH5s3jwYA)。
世界中の企業が欲しがる世界トップ学生を取り巻く環境は刻々と変化しておりますが、多くの非金銭的な魅力を持つ日本企業は、今後の世界トップ学生採用市場において台風の目となる可能性が高いです。また日本での就労を志望する学生は、会社のブランドに囚われず、自分が興味のある企業に就職する傾向にあるため、スタートアップでも十二分にチャンスがあるのが最大の利点です。よって、スタートアップに対しては特に、主観的なブランド評に囚われず、恐れることなく積極的に世界トップ学生にアプローチすることを推奨いたします。
当記事では概要のみ記載いたしましたが、もし世界トップ学生の採用市場に対してより詳細な情報を知りたいというご担当者様がいらっしゃる場合は、弊社のお問い合わせフォームまでご連絡いただければ幸いです(URL:https://forms.gle/yTT5Ar8kPH5s3jwYA)。
(執筆・編集:Jelper Club編集チーム)
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